腹直筋離開と正しく向き合うために
こんにちは。骨盤軸整体の野田です。
腹直筋離開に関しては当院でも、骨盤軸整体を開発する前の2010年ごろからセミナー開催を含めた積極的な情報発信を繰り返してきましたが、当時に比べて腹直筋離開に対する世間一般の認知が広がってきた反面、あやふやで曖昧な、それこそ産後女性の不安を煽って集客に繋げるような、適当でいい加減な情報も目にすることが顕著になってきたようにも思います。
またこちらのサイトで発信し続けてきたブログや動画での記事も、流石に10数年前の内容であったため、間違いではないにしろいかんせん古臭さは拭えなく、今回骨盤軸整体を組み入れた上での最新の内容にアップデートする必要があると考えました。
そのため旧ブログの内容をベースに、全体的に構成を刷新して最先端の内容をお届けしたいと思います。
腹直筋離開に関して正しい知識と理解を深めたい皆さんにとって、お役に立てれば嬉しく思います。
腹直筋離開とはどのような症状か
腹直筋離開とは妊娠期に腹直筋が左右に引き伸ばされた結果、産後に裂けてしまったように中央が凹んで見える状態です。
程度に差はありますが、産後女性のおよそ9割に発症すると言われるほど身近な症状でもあります。
腹筋群の表層部にある腹直筋は恥骨結合から胸骨下部の剣状突起まで縦に付着していますが、中心には白線と呼ばれる結合組織が走行しており、縦に長い腹直筋をバンドのように固定しています。
妊娠中にお腹が大きくなることで腹直筋と一緒に白線も左右に引き伸ばされていきますが、結合組織である白線は筋肉組織と比べて柔軟性がないため、一度伸びてしまったら自ら縮んで戻ることは難しく、産後もそのままの状態で残ってしまいます。

これが腹直筋離開としてお腹が裂けて見える原因です。
離開といっても本当に断裂しているのではなく、あくまでも白線が薄く引き伸ばされた状態です。
軽度〜中度の離開であれば産後半年〜1年ほどで自然と戻る場合が多いのですが、重度になるとおヘソがデベソのように突出してくる臍ヘルニアや、離開部から小腸が脱出してくる腹壁ヘルニアといった重篤な症状につながるケースもあり、そのような場合は積極的な改善が必要になります。
腹直筋離開の測定方法と判断について

腹直筋離開の判断方法
① クライアントは仰臥位。腕を伸ばし軽く膝を立てる
② 顎を引いて肩甲骨が持ち上がるまで頭を上げていく
(自分のおへそを覗くようなイメージ)
③ 施術者は白線に触れて以下の項目をチェックする
・離開の幅
・離開の縦の長さ(おヘソを中心として上下に確認)
・離開部の緊張度合い(指の触れた感覚で判断する)
腹直筋離開の程度の目安
医学的に正式な判断基準はないため、あくまで当院での主観によるもの
軽度
• 1〜2cm未満(指一本が入るか入らないか程度)
• おヘソの上下に黒ずんだ線(正中線)が現れる
中度
• 2cm~4cm前後(指1本~2本がきついくらい)
• 腹部の膨らみが目立つ(皮下脂肪のたるみとは違う)
重度
• 5cm以上~(10数cmに渡る場合もあり)
• 妊娠中のような腹部の突出があり、食後は特に顕著
• 臍ヘルニア(デベソ)も目立つ
本当に腹直筋離開はヤバいのか?
まず前提として、ほとんどの場合において腹直筋離開そのものが身体に及ぼす悪影響はないです。
先述した通り腹直筋離開は9割の女性に起こると言われていますが、言い換えればほぼ全ての産後女性の腹直筋は離開するわけで、極論を言うと産後は離開が起きるのは当たり前で自然なこととも言えるわけです。
先述したとおり軽度〜中度であれば産後半年〜1年ほどで自然と戻るものですし、そもそも結合組織である白線には痛覚神経もほぼ通ってないので離開によって痛みを感じることもなく、自分の腹直筋が離開している事にも気づかない、言われなければ自覚することもなかった方がほとんどだと思います。
ですから軽度〜中度であれば、少なくとも離開が原因で産後の回復にも悪影響を及ぼすことはないですし、そのために整体やピラティスなどに通って無理に閉じようとする必要もありません。
ただし重度な腹直筋離開がある場合に関してはその限りではなく、正しく改善させていく必要があります。
重度な腹直筋離開がある女性は産後にもお腹が突き出たように膨らんでいる場合が多く、中には妊娠中と同じくらいのボリュームのお腹を抱えて来院されるような方もいますが、そのような場合はほぼ間違いなく腹直筋がサポートの機能を発揮できていない状態です。
腹直筋は体幹を屈曲させる筋肉ですが、腹直筋の奥にあるインナーユニットと呼ばれる体幹を安定させる筋肉群を表層から支えて安定させる役割もあります。
しかし重度の離開が発生するほどに弱化してしている腹直筋ではサポート能力が発揮できず、産後の体幹を安定させることができなくなります。
そのため産後のインナーユニットの回復が大きく遅れてしまい、それこそがさまざまなトラブルにつながっていくのです。
インナーユニットの機能低下が産後に及ぼす影響とは

インナーユニットとは、胴体の深層部にある4つの筋肉の総称で
・横隔膜
・腹横筋
・多裂筋
・骨盤底筋
で構成されています。
インナーユニットの主な役割は腹圧をコントロールして体幹を安定させることです。
4つの筋肉を連動して収縮させて腹腔内圧(腹圧)を上昇させることで、体幹壁は空気がパンパンに入ったバスケットボールのように硬くなり、上半身の重さを引き受けて支えたり、重いものを持ち上げるような時にも身体を支えて負担を軽減させます。
私たちは通常時でも無意識のうちにインナーユニットを約30%の力で使っていて、それによって立位や動作時に腰椎にかかる負担を最大で30%〜50%軽減しているといわれています。
まさに二足歩行をしている私たち人間にとっては必要不可欠な身体のメカニズムなのですが、しかし産後の女性は妊娠中に引き伸ばされ続けた腹横筋とダメージが甚大な骨盤底筋が正しい働きを期待できない状態のため、インナーユニットの機能を十分に発揮することができません。
そのため腰椎や腰背部にかかる負担を分散できずに痛みを発生させたり、赤ちゃんを抱っこする際などにも腰で負担を支えざるを得ない姿勢となり、猫背や反り腰が産後もクセとして定着してしまいます。
さらに腹圧を適切にコントロールできないために尿もれの原因となったり、内臓を安定して支えられないので産後も下腹部がぽっこりした状態が長く続いたりします。
また少しの運動で疲れたり、赤ちゃんの抱っこが辛くなるなど、インナーユニットの機能低下は産後のQOLに大きな影響を与えるため、産後のボディケアではインナーユニットの機能を正しく回復させていくことが何よりも重要なテーマとなるのです。
腹直筋離開の改善における真の目的とは
上記のように産後女性の改善にはインナーユニットの機能回復が何よりも重要なのですが、重度の腹直筋離開が発生するほどに緊張を失われた腹直筋ではインナーユニットをサポートすることができず、産後の身体機能の回復を遅らせる大きな原因となります。
そのために重度の腹直筋離開に関しては改善させることが急務になるわけですが、ここで理解しておかなくてはいけないのが、単に離開の幅を閉じれば産後女性の改善につながるわけではないということです。
腹直筋離開の改善というとつい離開の幅を狭めたり閉じたりすることにばかりに意識がとらわれてしまいがちですが、離開があるように見えているのは腹直筋が適切に収縮できずに弛んだ状態だからであり、根本的な改善のためには腹直筋が正しく収縮できるような適切な緊張を取り戻すことから考えていかなくてはいけません。
つまり離開が発生しているから問題なのではなく、離開が閉じずに残ってしまうほど腹直筋が本来の機能を失ってしまっていることが問題なのです。
腹直筋離開は結果であって原因ではありません。
先述したように腹直筋離開が産後の不調の原因なのではなく、産後の不調をサポートできないほどに腹直筋が弱化しているから白線の隙間が広がりっぱなしとなり、結果として離開が発生しているのです。
ですから産後女性の身体を改善していくために、
①まずは腹直筋の機能を回復してサポート能力を取り戻す(それによって離開は必然的に縮小していく)②インナーユニットの機能を正しく改善していく
この2つを同時進行で取り組んでいく必要があります。
骨盤軸整体で腹直筋離開の女性の身体をサポートする
骨盤軸整体では主要な8つのポイントに対して施術をおこなうことで、重心の揺り戻しによって失われた本来の筋肉の働きを回復させることができますが、重度の腹直筋離開に対してまず実施したいのは①腹直筋と②大腰筋へのアプローチです。
さらにそこに③下丹田へのアプローチを加えることで、より産後女性の身体にかかる負担を軽減させて効果を高めることができます。
①腹直筋へのアプローチ
骨盤軸整体で腹直筋にアプローチすることで従来の正しい働きを取り戻し、身体の動きに応じて正しく収縮できるようになります。
左右の腹直筋が適切な緊張を取り戻すことで結果的に白線の幅を狭めることにつながり、インナーユニットのサポート能力を早期回復させることが期待できます。
②大腰筋へのアプローチ
大腰筋は腰椎を支えて安定した姿勢を保持する働きを担っています。
大腰筋の機能を高めることでインナーユニットに掛かる負荷を軽減し、腹直筋離開の悪化を防ぐとともに母体への負担を分散させることにつながります。
③下丹田へのアプローチ
下丹田とはヘソ下三寸と言われる恥骨結合からやや上部を指し、東洋医学では気を練る場所などと表現され、丹田を意識することで様々な健康の増進につながると言われています。
西洋医学的に見ても下丹田の位置は人体の中心(仙骨前面中央)であり、身体を動かす際にここを意識することで無駄なく安定した動きができるようになります。
そのような下丹田に骨盤軸を通すことで自然に丹田に重心を置いて身体を動かせるようになり、下半身の安定性の向上やインナーユニットの機能低下時における身体の負担軽減につながります。
※下丹田への施術方法はエクステンションセミナーでお伝えしています
腹直筋離開について正しい知識を得るために
先述した通り、腹直筋離開は産後女性であれば誰にでも起こる症状ですが、重篤な離開は身体の機能回復に大きな影響を与えます。
しかし現状においては腹直筋離開について正しい知識を持つ専門家がまだ少なく、離開の幅を閉じるといった目先の効果ばかりにとらわれ、そのための小手先のテクニックやトレーニングばかりが求められてしまい、本質的な改善まで意識を持って取り組むことのできる整体師やセラピストがいないのが現状です。
助産師の皆さんにとっても、腹直筋離開についてはまだまだ理解が進んでいないというのが実情ではないでしょうか。
腹直筋離開についての知識がないために本来は産後女性には禁忌であるようなトレーニングや効果の少ないエクササイズを課してしまい、結果クライアントの腹直筋離開の症状をさらに悪化させてしまうような残念なパターンもいまだに多く見られます。
さらに最近では腹直筋離開が産後の不調の原因です!というような、骨盤矯正で飯が食えなくなった整体師が新たな飯の種として腹直筋離開に着目し、必要以上に不安を煽って喧伝されているケースを目にすることも多くなりました。
産後のママさんはそのような劣悪な情報に振り回されてほしくないと心から願いますし、整体師やセラピストの方々には、そのような浅ましいビジネスには決して手を出さないでいただきたいと考えています。
あくまでも正しい知識を持って、正しい形で腹直筋離開に対応してもらえるように、骨盤軸整体ではアドバンスセミナーにおいて腹直筋離開への具体的なアプローチ方法やエクササイズも含めた、トータルでの適切な改善方法をお伝えしています。
助産師や産後の女性を対象にして活動している整体師・セラピストの皆様にとって、きっと有用な学びになると自負しています。
表面だけにとらわれない、本当の意味での産後女性の身体機能の回復のために、私たちの骨盤軸整体をぜひお役立てください。